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建設業界における“静かな流行病”:メンタルヘルス
注意: この記事は、精神衛生問題、精神障害、自殺について触れています。このトピックがあなたに苦痛を与える可能性がある場合は、読まないでください。困っている場合は、助けを求めてください。いのちSOS(特定非営利活動法人 自殺対策支援センターライフリンク)の無料電話 0120-061-338 をご利用ください。
2024年のお盆休みは最大で9連休となるなど、年間最大の連休となった方も少なくないのではないでしょうか?
連休明けは少しナイーブな気分になるものですよね。子供の頃の、夏休みが終わってしまった新学期初日の気分を彷彿とさせます。
建設業界でメンタルヘルスの問題に苦しむ労働者の数は、悪い意味で実に驚くべきものです。
それにもかかわらず、この状況について認知し意見することに対して、私たちは強い風当たりを感じ、正しい情報を共有することに苦労しています。
業界は”静かな流行病”に直面しており、寛解を実現するにはその沈黙を破り、声を上げることが必要です。
ここでは、私自身によるメンタルヘルスの危機の個人的な体験を紹介します。
業界の現状
- 83%の建設労働者がメンタルヘルスの問題を経験している。
- 他の業界の平均よりも、15歳以上の労働者のうち建設労働者の自殺リスクは2.8倍高い。
- 4人に1人の男性建設労働者が、過去3年以内にパワハラを一度以上経験している。
これらの数字の背後には、苦しんでいる人々がいます。
建設業界におけるメンタルヘルスの問題は、特定の人口統計と労働者のイメージにより増幅される可能性があります。
男性が多数を占めるこの業界では、「心身ともにタフな男たち」というイメージや有害なステレオタイプが、助けを求めたり公然と話すことを妨げる可能性があります。
その結果、業界はメンタルヘルス問題の”静かな流行病”に悩まされており、誰もが自分の苦しみを共有できず、誰もが尋ねない状況になっています。
意見と経験
私は、職場での欠勤や辞職は、ほとんどのケースでメンタルヘルスに関連していると考えています。
しかし、「今日はメンタルが不調で、本当に苦しんでいてお休みをいただきます」とは言いません。「風邪を引きました」「お腹の調子が悪い」「新しい環境で自分の力を試したい」「勉強に専念します」と言う方が社会的に受け入れられやすいからです。
私たちは皆で、メンタルヘルスに関する沈黙を破り、それへの理解と包み隠さなくても保護されるような信頼のできる環境を作る努力を続ける必要があります。その努力をし始めることで、より良いメンタルヘルスサポートの第一歩を構築することができます。
このまま、私自身のメンタルヘルス問題に関する経験についてお話ししましょう。初期の警告サインに気付き、サポートを求め、回復プロセスを経て、そしてメンタルヘルスの理解者になるまでの道のりです。
経験談
卒業してすぐにベンチャー企業の一員として尽力していました。業務内容はストレスが多いものの、圧倒されることはありませんでした。すべての浮き沈みに揺さぶられることなく対処していました。しかし、あるタイミングで自分のキャパシティを超えるいくつかの困難な状況に直面しました。それに加えて同時期に、これまで無関心だったことで見えていなかった家庭内の問題が顕現し、孤立に直面していました。
社会的孤立と家族の問題、仕事の課題が合わさって、凄まじい嵐を作り出したように思えます。それらすべてが、私は何もできないという圧倒的な無力感を生み出しました。
最初の警告サイン
思い返すと、最初に何かが間違っていると感じたサインは、すべてからの疎外感、徐々に蓄積される疲労、そして休息しても休まることがないという感覚でした。
休暇を取ったことを覚えています。休息が必要だと思って休暇を取ったのですが、戻ってきても、休みを取っていないかのように感じました。心の状態はもちろん物理的にも、体が全く休まっていないような感じでした。
それらに加えて、将来への不安や絶え間ない疲労感に襲われ、煙草やアルコールの摂取量を増やすというアプローチで応急処置とも呼べない自己治療を始めました。
この頃は平常だった時と比べて性格が少し変わり、イライラしやすくなり、怒りっぽくなったことに気付きました。それは私自身にとって異質で、馴染みのない感覚でした。
ですが、当時はこれらの症状を、自分が経験していたストレスとまったく結びつけていませんでした。
メンタルヘルスとの向き合い
異変が始まった年の末ごろには胸に痛みを感じ始めました。当時はそれが増えた煙草の本数による影響だと考えていました。しかし、その時の上司が、これらは重度のストレスの兆候だと、私に仕事を休んで専門的な助けを求めるように助言してくれました。
それは非常に感情に直接作用するような劇的な助言でした。私は自分自身に何が起こっているのか完全には理解していませんでしたが、誰かが「ストレス」と「助けを求めろ」と言った瞬間、それが私にピッタリとはまったのです。すぐに肩の荷が下りるような感覚でした。もう自分一人ではなく、誰かが理解してくれていると感じました。
すぐに医師に相談し、自分がメンタルヘルスの危機に陥っている事実を受け止めた後、心理療法を開始しました。
3ヶ月後には、仕事に戻る準備ができたと考えていました。しかし、最初の日にコンピューターを開いた瞬間、ストレスが一気に押し寄せ、もとに戻るにはもっと時間が必要だと悟りました。
結局のところ完全な回復には約9ヶ月かかり、その大部分は、自分が精神的な崩壊をしたという事実を認めることでした。
その3ヶ月の時点で、私は友人に仕事に戻るための精神的な準備ができていないことについて話していました。すると彼は「まあ、鬱だししょうがないよね」と言い、その言葉にショックを受けました。この言葉はこれまで自分の状態を示す言葉として使われたことがなく、また、ショックを受けたという事実が私にとって非常に重要でした。
当時、心の仕組みについては、自己啓発の本に書いてあるような偏った知識しか身につけていなかったので、ただ努力で修正できることだと思っていました。また、自分が当事者として経験したという事実を認めるという感情的な要素が欠けていました。そのときその言葉を使われたことで、やっと自覚したように思います。
理解者になる
私自身、別に理解者になろうと明確に決意したわけではありません。
当時復職したタイミングに、自分の不在の理由をどう説明すれば良いか、何をチームメンバーに伝えれば良いかを悩みました。
すぐに思いついたのは、ただ真実を伝えるということでした。メンタルヘルスの危機を経験したことをなぜ隠さなければならないのか?恥じるべきことは何もありません。それを何か別のもののせいにして隠してしまったら、メンタルヘルスに関する偏見を助長してしまうことになると考えました。
自分の経験を公然と共有し始めたとき、驚いたことに多くの人々が「その話に共感した」と言ってくれました。同じような経験をしたことがあると言ってくれる人が多かったのです。自分の経験を正直に語ることは有益であり、人は自分の話や経験を隠すと完全には回復できないのです。秘密にしていると、メンタルヘルスの問題を経験することが何か間違っているか、恥ずべきことであるという感覚が強化されてしまいます。
私たちは「メンタルヘルスの既往歴は人間としての汚点である」と考える悪い習慣を持ってしまっています。しかしそれは誤っていて、あくまでただの病気なのです。誰かが風邪やコロナにかかったときも同様に、それをその人の汚点だとは思うことはないでしょう。
業界は変わり始めているのか?
現在の建設業界の状況は悪いものですが、メンタルヘルスのイニシアチブが優先されるようになり、意識が変わりつつある兆しも見られます。
Constructing ExcellenceとConstruction Innovation Hubは、「バリューツールキット」というフレームワークを開発しました。これは、人間、生産、自然、社会という4つの側面における新しい価値の創造をサポートするものです。その目標は、モダン・メソッド・オブ・コンストラクション(MMC)の推進、社会的影響の提供、そしてネットゼロへの道のりを加速させるなど、主要な政策目標に沿った全体的なセクターのパフォーマンスを向上させることです。
これらの組織は、人間の資本の向上に強い重点を置いています。コミュニティの身体的および精神的健康を向上させることは、意思決定プロセスにおいて考慮されるべき最も重要な価値の一つです。
職場をどのように改善できるか?
メンタルヘルスへの対処方法を実際に改善するためには、まずはオープンに話し合うことから始めましょう。話を聞くことからです。これらの対話を歓迎することで、変化をもたらすことができるのです。
どうすればそこに到達できるか?
- これらの話題にオープンでありましょう。従業員のタスクやメトリクスだけでなく、彼らが直面している課題、ストレスへの対処方法、そしてどのようにサポートできるかについても確認しましょう。
- 従業員とチームリーダーの間で週次または月次の1対1のミーティングを設定し、問題を話し合うための専用の時間を設けましょう。
- メンタルヘルスに関するトレーニングを義務化し、意識を高め、真に福祉に投資しましょう。
- メンタルヘルスをカバーする保険プランを提供し、心理学者や精神科医への直接アクセスを含めるようにしましょう。
- メンタルヘルスサポートへのアクセスに関する定期的なリマインダーを提供し、すべての従業員がその情報を簡単に見つけられるようにしましょう。
- メンタルヘルスのために休暇を取る従業員がサポートを感じられるような復職プロセスを整えましょう。
どんな組織においても最も重要なのは、「大丈夫じゃなくても大丈夫なんだ」というメッセージをはっきりと伝えることです。そして、そう感じたときには、私たちに話すのは大丈夫なんだ、と安心させてあげることです。
建設業界は変わることができます。かつて、労働者が現場で死亡する原因となった物理的な安全性が大きな懸念事項でした。訓練、設備、予防措置の不十分さが問題でした。
業界は健康と安全に対して、まるで夏休み最終週の子供が宿題と戦うように集中し、驚異的な改善を遂げました。今度はメンタルヘルスのために同じことをする時です。
しかし、まずは現実を受け入れ、本当の会話に自分を開放する必要があります。
わたしたち楢﨑産業開発株式会社が、あなたの組織の成長の手助けとなることができれば嬉しいです。
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